年末年始 奥志賀スキー 3

声をかけてくださったのは、このへんにお住まいと思われる40代くらいの女性でした。
長靴を履いて、銭湯に行くのか、洗面器を抱えています。


「車がここで動かなくなってしまって、
 今からチェーンをつけるところなんです」

「あらあ、大変ねえ。手伝ってあげようか」

「いえ、なんとかなりますから」

「この大雪だものねえ。名古屋からいらっしゃったの?
 このへんも夕方までは道路には全然雪なかったんですよ。
 夕方から急に降り出して、あっという間にこんなに積もっちゃったんですよ」

「へええ、そうなんですか?」

「どこまで行かれるの?」

「奥志賀です」

「えっ、これから奥志賀まで?」

と話している間にも、雪はどんどん降り積もります。
寒いので、

「なんとかなりますから、どうぞもう行ってくださいね。寒いですし」

と言っても、

「いいのよ、暇だからね。ちょうどお風呂に行こうと思ったところなの」

と、チェーンをつけるわたしたちに、ずっと傘をさしかけていてくださいました。


なかなかチェーンがつけられず、いらっとする主人にも、

「パパ、怒らないのよ。落ち着いてね」

と声をかけてくださったり、
こういう場面で家族以外の第三者がいてくれると、
気が紛れるというか、煮詰まらなくてすみますよね。


チェーンは、片側はどうにかこうにかつけられたけれど、
反対側はタイヤが雪に深く埋もれていて、なかなか上手につけられません。
すると、その女性は、

「スコップ借りてきてあげるわね」

と近所のおうちからスコップを借りてきてくださいました。

「このへんの人はね、みんな四駆の車にスタッドレスよ。
 チェーンつけてる人は、ほとんどいないわね。
 この車は、FRね。FRはちょっと厳しいよね」


と、そのとき、車内に置いてあったわたしの携帯に、
宿泊先のオーベルジュ ブルーエのご主人から着信があったみたいで、
(道路の状況は大丈夫か、心配してかけてきてくださったようなんです)
ジロが携帯を見て、
「お母さん、オーベルジュから電話だよ」
と窓から顔を出して言いました。


すると、その女性は、

「オーベルジュって、もしかして、奥志賀のオーベルジュに泊まられるの?
 まあ、あそこの岸シェフはこの地区のご出身で、
 わたしもよく知ってるのよ。
 ここは山ノ内町の佐野っていうところなんですけどね」

「そうなんですかー。岸シェフのお料理、わたしも大好きなんですよ」

なんて話だけ聞くと優雅な会話に思えるかもしれないけど、
実際は前も見えないほど雪が降り続き、時刻はまもなく夜中の0時です。
1時間弱かかって、ようやくチェーンをつけられて、

「本当にありがとうございました」

と言ったら、

「ここから先、オリンピック道路に合流するところが複雑でわかりにくいので、
 そこまで道案内してあげるわね」

と車に同乗して、合流するところまで案内してくださいました。
そんなところまで一緒に来てくださって、ご自宅から遠くなっちゃって、
本当に申し訳なかったのですが、

「いいのいいの、お礼なんていいから、岸シェフによろしく言ってね」

と雪の中を歩いて行かれました。


どなたかわからないのですが、本当にお世話になりました。
この場を借りて御礼を申し上げます。
厳しい自然の中で生活する人たちって、
助け合わなきゃ暮らしていけないことも多いでしょうから、
「助け合いの精神」みたいなのがあるんでしょうか。
本当にさりげなく助けてくださって、ありがたかったです。


さて、オリンピック道路に戻ってからは、スリップすることもなく、調子よく進み、
上林からいよいよ道は厳しくなり、慎重に進み、
丸池、高天が原、一の瀬、焼額と通過し、
さらに雪深くなり、車1台、人1人通ってないような道を、

「本当にこの道でいいのかしら、って確か、この前来たときも思ったよね」

「本当に奥志賀は遠いよね」

と言いながら、
ついに午前1時、奥志賀のオーベルジュ ブルーエに到着しました。

年末年始 奥志賀スキー 3_c0147790_2338628.jpg


ここまでの道、つらかったよ〜。
でも無事に到着できてよかった!!
名古屋を出てから7時間でした。
by powderblueY | 2013-01-06 23:39 | 国内旅行 | Comments(0)


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