クラウドファンディングで資金を集めて作られた映画で、当初63スクリーンでしか公開されていなかったにもかかわらず、今、静かに人気になっている映画です。
わたしが観たのも平日の午後4時という中途半端な時間でしたが、ほぼ満席でした。
広島で生まれ育ったすずは、絵を描くのが好きで、ちょっとぼーっとしている普通の女の子。19歳で、同じ広島県の呉市に嫁ぎますが、お相手はほとんど会ったこともなく、名前もよく知らない人。当時の結婚ってこんなもん?
戦時中で食べ物も配給制になり、その配給さえ途絶えがち。お芋や雑草を工夫して食卓に上げますが、常にお腹が空いていたんだろうなあ。
呉市には海軍の軍港があったので、空襲では真っ先にねらわれ、1日に何回も防空壕に逃げ込む生活。わたし、今日の夕食をトンカツか生姜焼きかどっちにしようかと、暖房の効いた部屋で考えていた自分が申し訳ないような気持ちになりました。
でも、じゃあ戦時中の庶民は、追い詰められた暗い気持ちで毎日暮らしていたのかというと、そんなことはない。嫁いだ先の人間関係に悩んだり、工夫して作ったうすい雑炊のあまりのまずさにみんなで笑ったり、あ、意外と、今と変わらない気持ちで暮らしていたんだ、と気づかされました。
日々の生活が、淡々と描かれていきます。
でも観ている人はみんな知っている。映画の中の日にちが進むと、やがて昭和20年8月6日が来るということを。
戦争を扱った映画といっても、
「火垂るの墓」のように、つらく悲しい気持ちになる映画ではなく、
静かに感動する映画です。